IPアドレスは「ネットワーク上の住所」、MACアドレスは「機器の名前(識別番号)」です。データが届くまでの間、宛先のIPアドレスは終点まで変わらない一方、宛先のMACアドレスはルーターを通るたびに書き換わる――この一点を押さえると、2つの違いはほぼ理解できます。
どちらも「機器を特定する番号」に見えるので、ネットワークの勉強を始めたばかりだと混同しやすい用語ですよね。編集部で通信の流れを一つずつ追ってみると、2つは「どこへ運ぶか」と「目の前の誰に渡すか」という、まったく別の仕事を分担していることが見えてきました。郵便配達の「住所と受取人の名前」のたとえを使って整理します。
執筆:資格スキルアップ編集部/最終更新:2026年10月26日
結論:IPアドレスとMACアドレスは何が違う?
IPアドレスは「どのネットワークの、どこにいるか」を示す論理的な番号で、MACアドレスは「どの機器か」を示す物理的な番号です。
- IPアドレス:ネットワーク上の「住所」。接続するネットワークによって変わる
- MACアドレス:ネットワーク機器ごとの「名前」。製造時に割り当てられ、原則として変わらない
- 2つが連携することで、「遠くのネットワークまで運ぶ」と「同じネットワーク内の機器に手渡す」の両方が成り立つ
この3点が重要なのは、IT資格の試験でも実務のトラブル対応でも、「いま問題が起きているのは住所(経路)の話なのか、手渡し(同じネットワーク内)の話なのか」を切り分ける出発点になるからです。

IPアドレスとは?引越しのたびに変わる「住所」のようなもの
IPアドレス(Internet Protocol Address)は、ネットワークに接続した機器に割り当てられ、「いまどのネットワークのどこにいるか」を示す番号です。
郵便物を届けるには「東京都〇〇区△△1-2-3」のような住所が必要です。ネットワークでこの住所に当たるのがIPアドレスです。
- 自宅のWi-Fiとカフェのワイヤレス接続では、同じスマートフォンでも別のIPアドレスが割り当てられる
- 多くの場合、ルーターがDHCPという仕組みで自動的に割り当てる
- IPv4(例:192.168.1.1)とIPv6(例:2001:db8::1)の2種類がある
住所は引越しをすれば変わりますが、そこに住む人が変わるわけではありません。IPアドレスも同じで、機器そのものではなく「今いる場所」を表す番号です。だからこそ、別のネットワークにつなぎ直すと番号が変わるのは自然なこと。IPv4とIPv6の違いを詳しく知りたい方は、IPv4とIPv6の違いを解説した記事もあわせてどうぞ。
MACアドレスとは?製造時に割り当てられる「名前」のようなもの
MACアドレス(Media Access Control Address)は、LANポートやWi-Fiチップなどのネットワーク機器に製造段階で割り当てられる識別番号です。郵便のたとえで言えば「受取人の名前(田中太郎様)」に当たります。
- 48ビットを16進数12桁で表す(例:00:1A:2B:3C:4D:5E)
- 前半6桁(24ビット)はOUIと呼ばれ、機器メーカーを表す。後半6桁はメーカーが各製品に割り当てる番号
- PC・スマートフォン・ルーターなど、ネットワークにつながる機器はすべて持っている
住所(IPアドレス)が「どこにいるか」を示すのに対し、名前(MACアドレス)は「どの機器か」を示します。引越し(ネットワークの変更)をしても名前は変わらない。これが2つのいちばん根本的な違いです。
最近のスマホでは「MACアドレスは変わらない」が崩れている?
結論から言うと、最近のスマートフォンはWi-Fiにつなぐときに本来のMACアドレスとは別の番号を使うのが初期設定になっています。
Appleのサポートページ(「Appleデバイスでプライベート Wi-Fi アドレスを使う」)によると、iOS 14以降のiPhoneは初期状態でWi-Fiネットワークごとに異なるMACアドレスを使い分けます。iOS 18以降では、設定を「オフ」「固定」「ローテーション」から選べ、「ローテーション」では2週間ごとに別のアドレスに切り替わり、「オフ」にすると本来のハードウェアMACアドレスを使う、と案内されています。目的は、ネットワークをまたいだ端末の追跡を難しくすることです。
ここで編集部が強調したいのは、「MACアドレスは変わらない」は”機器に刻まれた本来の番号”の話であって、通信に使われる番号が常に同じとは限らないという点です。たとえば自宅ルーターで「MACアドレスで接続機器を制限する」設定をしている場合、スマホ側のプライベートアドレスが切り替わると接続できなくなることがあります。試験対策としては「MACアドレス=原則固定」で正解ですが、実務ではこの例外を知っているかどうかで原因の切り分けが速くなります。
IPアドレスとMACアドレスの違いを表で比べると?
違いを一覧にすると、次のとおりです。
| 比較項目 | IPアドレス | MACアドレス |
|---|---|---|
| 何を示すか | ネットワーク上の場所(論理アドレス) | 機器ごとの識別番号(物理アドレス) |
| 長さ・表記 | IPv4は32ビット(例:192.168.1.10)、IPv6は128ビット | 48ビット・16進数12桁(例:00:1A:2B:3C:4D:5E) |
| 割り当て | 接続時にDHCPで自動、または手動設定 | 製造時にメーカーが割り当て |
| 変わるか | 接続するネットワークで変わる | 原則変わらない(スマホのプライベートアドレスは例外) |
| 使われる範囲 | ネットワークをまたいだ通信(ルーターが参照) | 同じネットワーク内の通信(スイッチが参照) |
| OSI参照モデル | ネットワーク層(第3層) | データリンク層(第2層) |
| 身近なたとえ | 引越しで変わる「住所」 | 本人を表す「名前」 |
表の中で試験にも実務にも効くのは「使われる範囲」の行です。ルーターはIPアドレスを見て「どのネットワークへ運ぶか」を決め、スイッチはMACアドレスを見て「どのポートの機器へ渡すか」を決めます。機器ごとに見ている番号が違う、と覚えておくと構成図が読みやすくなります。
なぜIPアドレスだけでは届かないのか?
IPアドレスで決まるのは「どのネットワークの誰宛てか」までで、実際にケーブルや電波の上で隣の機器に渡すにはMACアドレスが必要だからです。
イーサネットやWi-Fiの世界では、データは「フレーム」という単位で運ばれ、フレームの宛先にはMACアドレスが書かれます。そこで送信側の機器は、ARP(Address Resolution Protocol)を使って「このIPアドレスを持つ機器のMACアドレスは何ですか?」と同じネットワーク内に問い合わせ、返ってきた対応をARPテーブルに記録してから送ります。ARPの仕組みは、IETFのRFC文書(RFC 826)で標準化されています。
一方、スイッチが持っているのはARPテーブルではなく「MACアドレステーブル」です。どのポートの先にどのMACアドレスの機器がいるかを記録しておき、フレームを正しいポートへ転送します。ARPテーブル(IP→MACの対応)とMACアドレステーブル(MAC→ポートの対応)は名前が似ていて混同しやすいので、試験前に区別しておきたいポイントです。
編集部としては、「IPアドレスが建物の住所なら、MACアドレスは部屋の表札」というイメージが一番しっくりきています。住所で建物までたどり着き、最後は表札を見て手渡す。その「表札を確かめる作業」がARPです。
データが届くまでに、どちらの番号が書き換わる?
実際の通信では、宛先IPアドレスは送信元から最終的な宛先まで原則そのまま、宛先MACアドレスはルーターを通るたびに「次に渡す相手」へ書き換わります。
自宅のPCからWebサーバーにデータを送る場面で、区間ごとの宛先を整理すると次のようになります。
| 区間 | 宛先IPアドレス | 宛先MACアドレス |
|---|---|---|
| ① PC → 自宅ルーター | Webサーバー | 自宅ルーター |
| ② 自宅ルーター → プロバイダのルーター | Webサーバー | プロバイダのルーター |
| ③ 途中のルーター → 次のルーター | Webサーバー | 次のルーター |
| ④ 最後のルーター → Webサーバー | Webサーバー | Webサーバー |
※自宅ルーターではNAT(プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの変換)によって送信元IPアドレスが書き換わります。ここでは宛先に絞って整理しています。
この表を見ると、2つの役割分担がはっきりします。
- PCは宛先のWebサーバーのIPアドレスを指定してデータを送る
- ただし最初に渡す相手は自宅ルーターなので、フレームの宛先MACアドレスはルーターのものになる(ARPで調べる)
- ルーターはIPアドレスを見て次の転送先を決め、宛先MACアドレスを次のルーターのものに書き換えて送り出す
- これを繰り返し、最後の区間でようやく宛先MACアドレスがWebサーバー自身のものになる
郵便で言えば、封筒の住所(IPアドレス)は最後まで同じでも、仕分け局から仕分け局へ運ぶトラックの行き先(MACアドレス)は区間ごとに変わる、というイメージです。「IPは終点を、MACは次の一歩を指す」。この一文を覚えておけば、ネットワークの問題で迷うことはかなり減るはずです。
自分のPCのIPアドレスとMACアドレスはどう確認する?
自分の機器で実際の番号を見てみると、ここまでの話が一気に具体的になります。
- Windows:コマンドプロンプトで
ipconfig /allを実行し、「IPv4 アドレス」と「物理アドレス」(=MACアドレス)を確認する - Mac:「システム設定」→「ネットワーク」→接続中のネットワークの「詳細」で、IPアドレスとMACアドレス(Wi-Fiの場合はプライベートアドレスが表示されることがある)を確認する
- ARPテーブルを見る:Windows・Macとも
arp -aを実行すると、同じネットワーク内の機器のIPアドレスとMACアドレスの対応一覧が表示される
自宅のPCで arp -a を実行すると、ルーター(多くは192.168.x.1)のIPアドレスとMACアドレスの組が表示されるはずです。教科書の「ARPテーブル」が自分のPCの中に実在すると分かると、用語が暗記ではなく実感として残ります。手を動かして確かめることが、結局いちばんの近道です。
まとめ:IPは終点を、MACは次の一歩を指す
- IPアドレス=ネットワーク上の「住所」。接続先で変わり、通信の終点を示す
- MACアドレス=機器の「名前」。原則変わらず、同じネットワーク内で次に渡す相手を示す
- ARPが2つを結びつけ、ルーターを通るたびに宛先MACアドレスだけが書き換わる
IPアドレスとMACアドレスの違いは、ITパスポートや基本情報技術者試験のネットワーク分野を学ぶ土台になる知識です。DNSやTCP/UDPといった次の用語に進むときも、「これは住所の話か、手渡しの話か」と問いかけるだけで理解のスピードが変わります。まずは今日、自分のPCで arp -a を打ってみてください。
▶ 次に読みたい関連記事:TCPとUDPの違い/LANとWANの違い/DNSとは?
よくある質問
Q. MACアドレスは本当に変わらないのですか?
A. 機器に割り当てられた本来のMACアドレス(ハードウェアMACアドレス)は原則として変わりません。ただし、iOS 14以降のiPhoneなど最近のスマートフォンは、初期設定でWi-Fiネットワークごとに別のMACアドレス(プライベートアドレス)を使うため、通信に使われるMACアドレスが本来の番号と異なる場合があります。
Q. IPアドレスとMACアドレスは、OSI参照モデルのどの層で使われますか?
A. IPアドレスはネットワーク層(第3層)、MACアドレスはデータリンク層(第2層)で使われます。ネットワークをまたぐ転送はルーターがIPアドレスで、同じネットワーク内の転送はスイッチがMACアドレスで判断します。
Q. IPアドレスからMACアドレスを調べる仕組みは何ですか?
A. ARP(Address Resolution Protocol)です。送信側の機器が「このIPアドレスを持つ機器のMACアドレスは?」と同じネットワーク内に問い合わせ、得られた対応をARPテーブルに記録します。WindowsやMacでは arp -a コマンドでARPテーブルを確認できます。
Q. 通信の途中で書き換わるのはIPアドレスとMACアドレスのどちらですか?
A. 宛先MACアドレスです。ルーターを通るたびに「次に渡す機器」のMACアドレスへ書き換わります。宛先IPアドレスは送信元から最終的な宛先まで原則として変わりません(NATでは送信元IPアドレスが書き換わります)。
Q. プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの違いは?
A. グローバルIPアドレスはインターネット上で重複しない番号で、外部との通信に使われます。プライベートIPアドレスは家庭や社内のネットワーク内だけで使う番号で、IPv4では10.0.0.0〜10.255.255.255、172.16.0.0〜172.31.255.255、192.168.0.0〜192.168.255.255の範囲がRFC 1918で定められています。外部と通信するときは、ルーターがNATでグローバルIPアドレスに変換します。


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